一ノ瀬さん家の家庭事情。

ｈｏｍｅ：１６

文化祭から数日。

校内はすっかり落ち着き、次なる中間テストに向けてみんな勉強モード。

さすが、こういうところの切り替えが早いところは進学校らしいなって思う今日このごろ。

あの日から浅丘君とは話せていない。

幸い、席も遠いし、クラスでは元々そんなに話していなかった上にテストのため部活も休みになるから接点がなくなった。

「一ノ瀬ー、ここわかんね。」

隣の席から久住君がノートを指差す。

「あたしに聞く？うーん…」

やっぱりわかんない。

数学をあたしに聞くなんて間違ってるよ！

「でもここ、範囲なんだよな。」

そうだ！

「帰ってから玲にきいてみる！それで明日、説明できるようにしてくる！」

前に誰かがテレビで言ってた。

勉強は人に教えられるようになってから初めて理解したことになるらしい。

「おう、よろしく。」

そう言うと、久住君はまたノートに向かった。

久住君とは普通に話せるのに、浅丘君とは目も見ることもできない。