一ノ瀬さん家の家庭事情。
そして二人がどんな恋人同士だったのかも。

ケータイを置いて部屋を見回すとあたしの生まれた年の二月で止まったままのカレンダーが壁にかかっていた。

二月十四日、あたしの誕生日には大きくはなまるがしてあって。


こんなにもあたしは愛されていたんだね。

改めて知ることができて、なんだかとても嬉しい。


「愛ちゃん、おまたせ。」

先生は部屋に入ってくると、ベッドに腰掛けた。

「兄貴はほんと、明るくてポジティブで友達も多かった。俺は引っ込み思案で口下手だったからなかなか輪に入れなかったんだけど、いつも引っ張っていってくれた。」

先生はどこか遠くのほうを見つめながら言う。

「唯さんもフワフワしてて優しくて、愛ちゃんに似てるよ。」

暁君と唯ちゃんに愛されて、あたしは生まれてきたんだ。

こんなにも大切に思われて。

「そろそろ下に降りようか、親父の仕事も終わったみたい。」

あたしは部屋を出るとき、心の中でつぶやいた。

「ありがとう。」

って。
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