一ノ瀬さん家の家庭事情。
「二人は必死で愛を守った。愛に、生きて欲しいって思った。」

目から熱いものが伝わって、止まらない。

二人が守ってくれたから、自分の命も犠牲にして守ってくれたから、あたしは今ここにいる。

「葬式が済んだあと、俺は正直途方に暮れていた。これからどうしよう、幸がいなくなって、一緒に暮らす予定だった唯ちゃんと暁もいなくなって。自信もなかった。五人の子供を育てていく自信が。」

一瞬にして全てを奪った事故。

りっちゃんはまだ四歳、優兄や真兄はたった二歳。

そして生まれたばかりのあたしたち。

「でも、そんな時、俺を救ってくれたのは子供たちだった。落ち込んでいる俺を笑わそうとしてくれたのは律や優、真だった。」

りっちゃんの肩が微かに震えてる。

「俺がこんなんでどうすんだって思ったよ。この子たちのためにも、俺が頑張っていかなきゃいけない。そう強く思った。」

そしてお父さんは、かばんから一枚の封筒を取り出した。
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