All I have to give



翌朝。幸い今日はハルが休みだった為、いつもより目覚めが遅くても咎められることはない。


瞼が腫れた顔はどんよりと重く、泣き疲れて眠ってしまったせいかひどく身体が怠く感じた。


冷たいシャワーを浴びて、なるべく何も考えないようにと思うがどうしても昨夜の事が頭の中で何度も蘇る。


リビングに顔を出すのは少し躊躇いがあった。
けれど、いつまでも部屋に籠っていてもハルに余計な心配をかけてしまいそうで。

そっと、ドアを開けた。



「…おう」


ハルは何故かスーツを着て、タバコをふかしながらチラッと私を見て。


「…おはよ。今日も仕事だっけ…?」


流れる空気は張りつめたまま。気まずさが肌にまでピリピリと染みてくる。


「いや、ちょっと用があってな」


「そっか…」


ハルのプライベートには、首を突っ込んじゃいけない。今更そんな事を思い出して、これ以上の答えを求めなかった。


それなら私は今日、不動産や仕事を探しにでも出掛けよう…


「コーヒー飲みたい」


「…分かった」


ハルは深く紫煙を吐き出して、私を振り返ることのないまま言った。


これが、本来の関係。
何も不思議な事ではないんだ。


だから、グッと締め付けられるこの胸がおかしい。


その背中に触れることさえ、きっともう叶わない。



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