All I have to give



ハルはコーヒーを飲んだ後、すぐに出掛けていった。


『遅くなるかもしれねぇけど…』


と歯切れの悪い言葉を残して。


ハルがどこに行くのかは分からない。
でも、日和さんに会いに行くのだということは分かった。

待ち焦がれていた愛する人が、二年ぶりに帰ってきた。

必ず帰ってくると信じていたハルなら嬉しくて仕方ないはずだから。


結婚に向けての話も進んでいくのかもしれない。

日和さんは、あの時ハルのお父さんに挨拶がしたいと言っていたし…。


そうしたら、やっぱり私は早急にここを出ていかなきゃいけない。


泣きそうになるのをグッと堪えて、私もハルのマンションを出た。


8月に入ったばかりの空には、真っ白な雲が浮かんでいてよく映えている。


蝉の鳴き声が煩い並木道を、重たい足取りで駅前を目指して歩いていく。


車が横を通り過ぎていく度に、生暖かい風が頬を掠めていった。


じりじりと焦げてしまいそうな暑さに、ハルと行った海が恋しくなる。


あの頃に戻れたら…


楽しすぎて、幸せすぎた7日間。

あの日々の記憶が、今となっては苦しいものに変わるって覚悟していたはずだったのに。


「ダメだな…ほんと…」



ポロポロと涙が零れた。



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