紅桜の散る頃に。
なんていつも通りの会話をしていた。

蛍は不意に廊下を曲がり、空教室に入った。

「えっ?」

驚いたけど他に行くところもないので蛍に続けて私も教室に入る。

前は写真部の写真を現像する部屋だったけど今は使わなくなった教室だ。

遮光カーテンが閉まっていて室内は昼間なのにも関わらず真っ暗だ。

「ほ...蛍?どこ...?」

何も見えない恐怖の中で蛍を探して足を1歩踏み出す。

「わっ...!」

しかし踏み出した先に何かあったみたいでそれにつまずいて転けそうになる。

「ちょっ...」

珍しく焦った様な声をあげた蛍。

すると支える様に優しく何かが私を包む。

「ったく...お前バカじゃねぇの?なんで転けるんだよ。」

呆れた声が頭上から聞こえる。

蛍だ...

「く、暗くて何も見えなかったんだもん!」

抱き締められたままな事を忘れて憎まれ口に抗議する。

するとガラッと教室のドアが開く音がした。

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