HALF MOON STORY
「知ってるよ、昨日ここに
来たもん」
先輩がそう言った
それを聞いた別の課の人は
ちょっと残念そう
先輩人気者なんだよね
係長が助け船をだす
「僕たちも昨日
知ったんですよ
ビックリしました」
私もだ
その人は現場の人だけど
事務をしていたから
ここに良く来ていたのだ
「昨日ここに
仕事が終わってから
来て、色々教えてくれました」
本当に良く話していった
相当に楽しいんだと思った
大人があんなに嬉しそうなのを
正直私は初めてみた
私はこういう事は
少し悲哀感が漂うものだと
思っていたので
この話には参加しないように
していた
勿論入社二年目の私が
先輩達と対等に話せるはずもないけど
「宮崎に移住するらしいですよ
海のそばだって」
先輩がこくこく頷いた
「魚釣りが好きだから
魚釣りができる所にしたらしいよ
いいよね
私も行きたくなった」
そう話を続けた
「しばらく、専業主夫するんだって
言ってた。
お子さんも大きいみたいだから
そこらへん気にしてないみたい」
その方はまるで
修学旅行にでもいくみたいに
楽しそうにずっと話続けた
三男で親の世話をしなくて
良いらしいが
それにしても
人生考え方によってこんなにも
思いが違うというか
こんな風に軽くスキップする様に
人生を決めてしまえる強さに
少し感動した
私は
そんな大人を知らなかったから
少しショックだった
大人っていつも
頭をかかえているものだと
思っていたから