Secret
なにかを囁き

そして、諒から離れた。

比較的、2人の近くにいた私には

『――カラむんじゃねぇーよ』

由良くんの小さくて低く唸るような声をかろうじて聞き取ることができた。

その言葉を言い捨てて、由良くんは悠然とこの場を離れていく。

「……ふざけてんじゃねぇーぞ!!」

我に返ったらしい諒が、由良くんの背中に向って怒声を発し

それだけでは苛立ちが収まらなかったのか、近くにあったバケツを力任せに蹴り上げた。

壁に当たったバケツがけたたましい音が響かせ、廊下を転がる。
< 200 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop