銀座のホステスには、秘密がある
「おまえの言葉を信じて、おまえの幸せの邪魔はするまいと、銀座には近寄らなかったけど……サラを見てたら、おまえの言葉を疑いたくなる」
「どういうこと?」
「本当に俺と別れたかったんか?」

違う。
本当は殿の傍を離れたくなんてなかった。

「俺が身を隠してる間、おまえは必死に探してたそうやな。それは村岡さんから聞いたよ。なんでだよ、サラ」
「それは……」
「さっきだって、俺を見た時、おまえは泣いてたやろ?」
「……」
「髪の色だって変えてないし」
「それは殿だって同じじゃない」
「その呼び方だって……本当はどうなんだよ。なんで別れたいなんて言ったんだ」

言葉に詰まったアタシの手を殿が握った。
真っ直ぐな目で見つめられてる。

だけど、言えない。
本当のことを言えば、脅された内容まで話さなきゃいけなくなる。

「ごめんなさい」
「サラ。他にも隠してることがあるんか?」

一瞬言われたことが理解できなかった。

「他にも?」

殿はアタシの手を離して、アタシが作った水割りを口にする。

「おまえの秘密には気が付いてたよ」

心臓が早鐘を打つ。
手が震えて、真っ直ぐ座っていられなかった。

「ひ…みつ…?」

必死に動揺してないってフリをするけど、喉がカラカラで声が掠れる。

「いつ話してくれるかとずっと待ってたよ。アキラ」

ぐらりと世界が揺れた。
身体を支えていられなくなって、ソファーに倒れ込んだアタシのすぐそばに殿が座り直す。

「それは……」
「俺には教えたくないのか?」

だって、言ってしまえば殿は離れていく。
もし正体がバレたら、アタシは殿に嫌われる。

「でも……」

「アキラは、俺にとって最高のオンナだよ」

殿はアタシが女じゃないって気付いてる……
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