Fly*Flying*MoonLight
新月

AM10:00 社長室、その他

――AM10:00 社長室
「……本日、防災訓練がこのビルで実施されますわ」
「……ああ」
 確か、十四時頃からだった。
「俺は、パスさせてもらう。今日中にこの書類を届けたいからな」
「非常ベルも鳴りますから、少し騒がしくなりますよ?」
「わかった」

 美月が一礼して出て行く。俺は再び書類に没頭した。

***

――AM10:00 ???
「……しかし、そんなことでいいのか?」
「ラッキーだろ? 発煙筒でボヤ騒ぎに見せかけるだけで、この金だぜ?」
「ご立派なビルだよな。ここの社長、確かまだ若いんじゃ……」
「けっ、どうせ金持ちなんだろ? 少しくらい肝が冷える思いさせたからって、バチ当たらねえよ」

***

――PM2:00 保安室
「……二十階のスプリンクラーが故障して、水が漏れている、と連絡がありました」
「……今避難訓練中だな」
「はい」
「とりあえず、水道の元栓を閉めて、訓練から戻り次第、詳細を聞くように」
「はい、わかりました」

***

――PM2:00 ???

「……ふん。楽勝だな。誰もいねえし」
「なんだよ、これ? 変な匂いするよな」
「嫌がらせ、したいんだとよ。あんまり吸うなよ、揮発性薬品だからな」
「でも、変だよな。避難訓練中の誰もいない時に、蓋開けろってさ」
「被害を減らしたいんじゃねーの? 目とか鼻とかやられるかんな」
「とっとと行こうぜ。見つかる前にさ」

***

――PM2:00 ???

 ……次の喜寿の祝いで正式に発表する。

 そう、言った。

「そうはさせるものか……っ!」

 準備、はできている。金で動く奴らはこういう時に便利だ。

 それぞれが、それぞれの、働きをするだけでいい。
 ……すべてつながった時に、どうなるか、あいつらの誰も知らない。

「今度こそ……思い知るがいい……!」
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