未知の世界

翌朝、目が覚めると、胃は昨日よりも痛みが引いていた。





転んで怪我した頭も包帯からガーゼとなって、治ってきた。






そういえば、看護師の近藤さんから、施設が閉鎖されるにあたって、私の服を役所の人が持ってきてくれたって言ってたっけ。





と、棚の服を確認した。





しかし、もともとパジャマは一枚。






今着ている前開きのパジャマじゃない。




このパジャマ、病院が用意してくれたものだった。







そういえば、この階で洗濯できるって言ってた。





干すのは屋上。





そろそろ、切れてきたし。





洗濯ついでに。







そう。






実は、薄々気づいてる。







先生の言ってた喘息。





この原因は、アレルギーなんかじゃない。












館長に無理矢理吸わされて、あれからやめられなくなったんだよね。






いけないって分かってても、やめられない。






だって、胸がキュッとなるとき、吸うと楽になるんだもん。





薬と思って、吸ってた。





そろそろ。





と、朝の回診、朝食、そして吸入を終えて、お昼ご飯までの時間は2時間もある。







洗濯機は回せたから、これを持って、屋上へ。






ナースステーションの前を通る。






「かなちゃん、どこに行くの?」






ギクッ!





振り返ると近藤さん。





私は慌てて、




「お、屋上で洗濯物干そうと思って。」







と答える。




すると近藤さんは、



「あらそう。
もしもう一着パジャマが必要なら言ってね。
入院で必要なものは、役所の方からお金が出るようになってるから、洗濯で無理しないようにね。」







と意外にも私の体を気遣かってくれる言葉をかけてくれた。





「あ、ありがとうございます。」






と、私は返事をして、そそくさと屋上へ向かった。
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