未知の世界


「やめて!







うっ





痛い。」







と自分の顔が歪むのが分かるほど、佐藤先生に触られたところが痛かった。





「これで痛いか。」







と佐藤先生に尋ねられたが、私は意固地になり、黙ったまま。




何で、私がお腹痛いことを知ってて、急に触ったりするの。




一言いってくれたっていいのに。






「ここは?」







と少しズレたところは触られた瞬間、






「はうっ






ハァハァハァ」   






さすがに我慢できず、目元から涙がこぼれた。




私は、お腹の痛みに堪えられず、さらにこれ以上触られないようにと、お腹を押さえてエビのように丸まった。





「次は、胸の音を聞くから、仰向けになりなさい。」





と佐藤先生が言うが、私は丸まったまま。




断固として動こうとしない。




すると、佐藤先生から、


 
「なぁ。俺のこと嫌いか。昨日も今日も俺を見ては逃げて。」






と言われるが、私は黙ったまま。





「それとも、体の傷を見られたくないのか。」





と言われ、私はうなづく。





「俺は、医者だ。病気はもちろん、傷を治すのも俺の仕事だ。




だから、逃げずに向き合え。」




と言われ、丸まった体を伸ばし、仰向けに、、、





「痛い!」





と、また痛みが走る。




体を伸ばしたからかな。




もう嫌だ。

  
 


涙が止まらない。



痛みが怖くて体を曲げたまま。





すると、佐藤先生が、





「丸まったままでいいから。そのままで。」




といい、私の胸元から診察を始め、そのあとは、背中。




「すぐに胃を検査して。そのあと、吸入」



と近藤さんに指示してる。





私は、




「大丈夫ですから、検査はいいです。」





と小さな声でつぶやく。





すると佐藤先生に、



「お前の体は、俺が診て判断する。


検査だ。」





と言い放ち、近藤さんとベッドを移動させ、違う部屋へ向かった。





検査なんて、何するの?




もう嫌だよ。





と不安になってると、途中、早川先生も加わり、私は三人に運ばれた。





検査は、どうやら口の中からカメラを入れて、胃の中を見るようだ。




横向きにさせられて、口を閉じないように器具を加えさせられた。




私は、これからどんなことが起きるのか、不安で仕方なかった。




怖さのあまり、口の器具を外し、起き上がろうとすると、





「また逃げるのか!」




と肩をガッチリ佐藤先生に押さえ付けられた。
    




そんなことされたら、余計に怖いよ。





私は、





「ひやだー!ひゃめてー!」




ととにかく叫び、顔を後ろに反らした。




しかし、すぐに佐藤先生に押さえ付けられた。




「そんなにいやがっても、やらなきゃ治らないんだぞ。



何も治らないままじゃ、退院なんてできないぞ。」








そんなこと分かってる。





泣きながら、口をあけていると、早川先生がすんなりとカメラを入れてきた。




喉に違和感を感じたが、そこまで苦しくない。




「胃が荒れてますね。」




と早川先生が言うと、佐藤先生が、




「胃炎だな。今日一日絶食して、薬で様子見だな。」




と答える。





私は、何のことかわからず、ただされるがままになっていると、突然、喉が乾燥しすぎたのか、むずむずとかゆくなってきた。






「ケッ



おえッ



おえおえ、、、、」





すると早川先生が、 





「かなちゃん、肩の力を抜いてね。力を入れるとカメラがうまく出ないから。」





と言われるものの、力を抜こうとすればするほど、力が入ってしまい、苦しい。






「ヒューヒューヒュー






ゲボッゲボゲボ、、、、、



ヒューヒューヒュー



ヒイヒィヒィ、、、、ハァハァハァ」






苦し、、、い




何か先生の声が聞こえるけど、もう訳わかんない。





嫌だよ。助けて。



















私はそのまま意識をなくしてしまったようだ。









目を覚ますと、口には酸素マスクが当てられていた。





そして、部屋ではなく、どこにいるのか、閉められたカーテンの中にいた。





ベッドの左側には、点滴をいじる近藤さん。








「目が覚めたね。もう大丈夫だよ。先生呼んでくるからね。」





といい、どこかへ行ってしまった。





どのくらいが経ったのだろうか。





はぁ、検査なんてしなくてもいいのに。





早く退院させてほしい。






すると、カーテンがあき、佐藤先生と早川先生が現れた。





早川先生が、





「検査、苦しい思いをさせちゃったね。





もう大丈夫だからね。




かなちゃんね、胃炎って知ってるかな。」





と私に問い掛ける。




私は、首を振って、知らないことを伝える。




「胃炎っていうのは、胃が炎症を起こして荒れてしまってることをいうんだよ。




今日一日絶食をして薬で治そうと思っていたんだけど、もう絶食したまま一日が終わろうとしてるんだ。」






と言われ、長い間寝ていたことを知った。




続けて早川先生が、





「まだ薬は数日飲みつづけて、また痛みが続くようなら、検査するからね。




痛みが出たら、必ず言うんだよ。」




と、まるで子供を諭すかのように言う。




すると佐藤先生が、




「なんで今日の吸入前に、胃が痛いことを言わなかったんだ。」





と言われ、私はビクッと体を動かしてしまった。




この人、やばい観察力。




「答えなさい。」





と続けて厳しい言葉。





私は、小さな声でうつむきながら、





「何でいちいち自分のことを言わないといけないんですか!






何でこんな入院なんてしないといけないの?




突然病院で検査受けることになって、入院って聞いたと思ったら、帰る場所もなくて。


病院なんか、来るんじゃなかった!」






と、今日一日溜まっていたうっぷんを晴らすかのように、矢継ぎ早に言葉が出ていた。





目には涙が浮かんでいる。




先生がぼやけて見える。





すると、呼吸がしずらくなってきた。




「ハァハァハァ」




と苦しくなる。すると、早川先生が、





「大丈夫。落ち着いて。深呼吸して。大丈夫だよ。」





といい、私の背中を撫ではじめた。






ビクッ!








ドン!








私は、突然体を触られ、忘れていた恐怖が全身に襲い、早川先生を突き飛ばしていた。






「ハァハァハァハァハァハァ、、、





フーフーフーフー」




と自分で呼吸を必死にととのえていた。





すると、佐藤先生が持っていた器具を私の口に押し当て、





「いいか、俺が押すタイミングに息を吸うんだ。





行くぞ。」





 
プシュッ






「そうだ、落ち着いてきただろ?」





と言われ、呼吸が元に戻ったことが分かった。





「この吸入器を常に持ってなさい。今のように、押した瞬間に息を吸うと薬が出てくるから。
発作が起きたらこれを使いなさい。」





と言われ、器具を渡された。





そして、その日は、部屋に戻り、一日中疲れたせいか、夜はぐっすりと眠りに着いた。






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