未知の世界

目を覚ますと目の前には食事が置かれていた。




パンに温野菜、コンスープに牛乳。





さすが病院食。





喉が乾いたから、牛乳を飲んだ。






寝起きで食欲はないけど、せっかく作ってもらったものだから、ちゃんと食べないとと思い、無理矢理口に押し込んだ。






見た目以上に味がしっかりついてて、美味しい。






けど、







食べすぎたかな。







気持ち悪い。






食器はどうするんだろう。





廊下を覗くと、食器が入ってたと思われるカートがある。





そこへ食器を持っていく。






カートには、食べ残しの目立つ食器が多かった。





そうだよね、皆、体調悪くて入院してるんだもんね。






私、無理してでも食べれたけど、何で入院しなきゃならないんだろ。





なんて考えながら部屋へ。






ベッドで横になると、お腹がいっぱいになったからか再び眠りについた。










「、、、なちゃん、、、、





かなちゃん!」







ん?






目を覚ますと看護師の近藤さん。






「かなちゃん!一日目から吸入忘れてない?
さっき佐藤先生から連絡あったよ。」







「吸入?」









「あーもう、今朝の回診で吸入を受けることと院内学級で勉強することを言われたでしょ?




眠たそうにしてたから聞いてるか心配してたけど、まさか吸入のことすら頭にないとは。」









確か、そんなことを先生は話してたかも。







「急いで処置室に行ける?」







と急かす近藤さん。






「はい。急ぎます。」






と私が答えると、







「もちろん、走っちゃダメよ。」






と近藤さんが付け足す。






なんだか、病人扱いだな、もう。






って、私って一応病人?





とりあえず、急いで行こう。






少し小走りをして、3階の第三処置室へ。





階段を下りると、下りる度に頭が痛む。




昨日ぶつけたところかな?痛い。







すると突然、







「うっ。」









気持ち悪い。






トイレに走った。







胃の底から込み上げる。






朝ごはんかな。











「うっ。」









ゲボッ








はぁ。間に合った。







「ふー、スッキリしたけど、胃が痛い。」







口をゆすいで、再び処置室へ急いだ。






初日からふらふらだ。





第三処置室を開けると、昨日診察を受けた机のそばに、佐藤先生が座っていた。







「おい。遅いぞ。寝てたんだろ?」







扉の前で一瞬にして固まる私。






いきなり怒鳴られ動くことができなかった。





「こっちにきなさい。吸入の説明の前に、診察するぞ。」







と佐藤先生に言われ、一歩前に出た。




「あの、、、診察って毎日吸入の前にあるんですか?」







と、思わず私は聞いてしまった。






すると佐藤先生は、





「いや、今朝より顔色が悪いから、とりあえず診察だ。」






と言う。






私は、







さっきトイレで吐いたことがばれてしまう。







と思い、慌てて処置室を出た。





処置室を出て、思わず走って逃げてしまった。






しかも、きた方とは反対。







これはどこに行くの?





とりあえず、走る。





後ろから聞こえる怒鳴り声。







もう捕まれない。






ん?







すると、前方に白衣を着た背の高い先生。






どん!





止まりきれず、背の高い先生のお腹におもいっきり激突。






「こら、廊下は走るな。」







と、見下ろす顔は、とても怖い。






佐藤先生を上回る怖さ。







「医局長、すいません。」




後ろから佐藤先生の声。






恐怖のあまり、振り返ることができない。








私は、佐藤先生と佐藤先生を上回るほど恐ろしい顔をした医局長に連れられ、近くの部屋に入れられた。





どうも、私の向かって行く方向に、先生たちの部屋があるみたい。







走って行った方を間違えた。





はぁ。






と下を向いていると、


    



「君だね、昨日、診察中に抜けだして、走って転倒して怪我をしたのは。





ここは、病院だ。





病院に来るには、それなりに体調を崩して来るはず。




そんな人が走っていいと思ってるのか。




なぜ、そんなに君は逃げるんだ。」






と、医局長の声が聞こえるが、怖さのあまり上を見ることができない。

 


怖くて涙出そう。






それに追い撃ちをかけるかのように、







「こら、返事をしなさい。」





と、佐藤先生が言う。




私は、その場から急いで逃げたくて、後ろを向き、部屋の扉に手をかけようとした。





その時、






ズキン






痛い。






胃が痛い。






でも、今それどころじゃない。




だけど痛くて手を動かせない。






と痛みのあまり、変な汗が出てきた。





するとそれを見た佐藤先生が、




「また逃げるのか?」





と近づく。






私は、ばれないようにと下を向く。





少し痛みが和らいだので、振り返って、





「ごめんなさい。」






とやっとのことで言った。





医局長の顔を見ないまま、部屋を後にした。







私は、途中トイレで休憩して、ズキズキと痛むお腹を押さえながら、部屋に戻った。





するとそこには、






佐藤先生と近藤さん。

  


「さっき診察も吸入もしてなかったからな。
ベッドに横になりなさい。」





と言い、近藤さんに背中に手を添えられ、ベッドに寝るよううながされ、ベッドに横になった。





すると佐藤先生はいきなり、私のお腹を触り始めた。





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