MAHOU屋
「子供に好かれるクッキーって何だと思う?」


唐突な質問に、ソラの口が止まる。
うーんと今度は唇をアヒルのように尖らせている。


「そらはちょこがすきー」
「ソラの話をしているわけじゃないと思うよ」


チヒロの指摘に「ソラも立派な子供だから参考になる」とレインさまが言った。


「チヒロは?」
「―――ぼくはレイン、が焼くクッキーなら何でも好き」
「一番は?」
「全部好きだから、わかんない。参考に、なんないよね?」
「そんなことないよ。ありがとう」


レインさまはたんぽぽのように笑った。
その顔を見ると、どうしても胸が苦しくなる。
太陽みたいにぽかぽか咲くのに、太陽自身にはなれなくて、焦がれているような。


「にぃに、よーぐゆとかわりにたべてあげりゅ」


ソラの瞳が心配そうにチヒロを見上げている。
ヨーグルトと、自分の好きなものをあげるところは現金な気がするけれど。


「元気がないわけじゃないから、大丈夫」


あからさまに舌打ちしたのは、デビルの真似だろうか。
そのあと「でもよかった」と安心するあたりも、デビルにそっくりだ。
二人はときどき、親子のようだと思う。
それはソラがとうさまのことを知らないからだろう。

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