デスサイズ
(うう…千加子(ちかこ)……会いたいよ…)
林 千加子。
5年間連れ添った、現在は別居中の妻。
3年前くらいから態度が冷たくなり、半年前に「しばらく会いたくない」と置き手紙を残して、家から出ていった。
妻のことは心から愛している林は、何度も電話やメールを送っているが、千加子から返答は何も無く、そのことが一層、彼を苛立だせていた。
(どいつもこいつも人の気を知らねえで、勝手なことばかり言いやがる!)
―ムカつく
―ムカつく
―ムカつく
―ムカつく
ゆっくりと林は立ち上がり、寝室へと入っていった。
林の寝室の中には、茶色いチワワ……カナの愛犬ココアが口に轡(くつわ)をはめられた状態でケージに入れられていた。
「キュ……ピー、ピィ」
轡のせいで吠えることができないココアの口から、怯えを含んだ声がもれる。
夕方、公園でカナがトイレに入っている間にココアをさらったのは林だ。
カナと鈴が互いにペットを自慢している場面を目撃し、その時からココアに目をつけていた。
隠しもっていた麻酔針でココアを眠らせ、持っていた鞄の中に押し込み、そのまま家に連れて帰ったのだ。