魔女が消えた日
母の愛と別れ

どうか。どうか、貴女だけでも…生きて!!!

サラサラと消え行く儚き魔女の声は森の中で静かに響いた。




ホーペ…貴方が魔界に連れ戻されて少し経ったわ。
貴女との間にできた小さな命を私は貴女の分まで守り抜くわ。
ホーペと離れ離れになって私は一人でこの子を育てると決意した。
決して誰にも渡さない。この子は私が守っていくの。

貴方に救われた私も。この子と一緒に強く、生きていく。

ひっそりと静かに小さな村に身を潜め、
魔女の薬で魔力をおさえながら、魔女の末裔、アモーレはしずかに一人の子を産んだ。
その赤子の名はルーチェ。この狂いはじめた世界に光を。その意味を託した。
この赤子が後の世界を大きく変えることになるのは母も知ることはなかった。

ルーチェを育てながら貧しくも織物や裁縫で生計を立て暮らしていたある日。
一人の村人に魔女の薬を飲む姿を目撃されてしまった。
魔女の薬は人間が飲めば死に至るもの。
毒々しい紫色をしており、人間にとっては見るに見かねるものだった。

一人の目撃者によりうわさは村中に広まり、この村に魔女がいる!と村はパニック状態。

様子に気づいたアモーレは身を潜め、いつきてもおかしくない村人からの攻撃に構えていた。
いつナイフが飛んできてもいいように魔法でフライパンを盾に、窓にはカーテンを張り巡らせた。
ばれてしまったらもうこの村には住み続けれない。いかにルーチェと自身を守るかに徹していた。

月の明るい丑三つ時。村人は動いた。
一斉にアモーレが暮らす今にも崩れそうな家に火のともったたいまつを次々と投げ入れた。

これにはアモーレも驚きルーチェを抱えすぐさま裏口から逃げ出した。

村人は焼き崩れた家の亡骸を見て、魔女を倒したと、勇敢なるものとでもいうように騒ぐのであった。


ルーチェはひたすら走り、森の奥へ、奥へ、走った。
履いていたボロボロの靴は破れもはや素足で
胸に抱いたルーチェが泣き喚く中、必死に走った。この身が擦り切れても
この子だけは守り抜くと決めたから。


それが…ホーペとの、最後のやくそくだから。

< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop