シルビア
そう、今回使用しているこの会議室は営業部用のもの。
私たちのフロアでは当然日当たりが悪く、写真が綺麗に撮れない。
そのためどうにかしてこの部屋を借りられないかと営業部に頼んだところ、武田さんたちは二つ返事でOKを出してくれた。
ところが案の定とでもいうべきか、柳下さんたち女性陣からは当然猛反対されてしまった。
「もう大変だったよー……『自分のところで上手く撮れないならスタジオなりなんなり借りれば?あ、貧乏部署には予算がないんだったわね。ごめんなさいね~』って……」
「うわぁ……想像つきます」
『フフン』と鼻で笑う柳下さんたちの姿が簡単に想像つくのだろう。黒木ちゃんは笑ってみせるけれど、その目は笑っていない。
「でもそれがどうして折れてくれたんですか?」
「え?あー……宇井さんが、上手くまとめてくれて」
「あぁ、宇井さん口うまいですもんねぇ」
うまいというかなんというか……。
最終的には望が『営業部用の会議室だけど所有者は会社なんだから、社長に事情話してOK貰ってくるね!』と社長室に乗り込もうとしたため、それはさすがにと柳下さんたちも折れざるを得なかった。
望なら本当にやりかねないから恐ろしい……でもまぁ、そうやって人のために動いてくれるところが、また。
「でも宇井さんって、優しいですよね」
「え!?そ、そう!?」
黒木ちゃんの突然のその一言に、心が読まれたのかと心臓がどきりと跳ねる。