シルビア




ポン、と小さな音とともに、止まったエレベーター。

12階のフロアへと降りるとドアがいくつも並ぶ長い廊下を歩き、『営業部』と書かれた白いドアをノックする。



「はーい……あら、どちら?」



ガチャ、と開いたドアの向こうに広がるのは、大きな窓から日差しが注ぐ、清潔感あふれる広々としたオフィス。



「株式会社Lamiaの葛西と申します。担当の武田さんと、アクセサリー事業部に関しての打ち合わせのお約束をさせて頂いているんですが」

「武田さん?あぁ、ちょっと待ってて」



そこで出迎えたのは、長い茶髪をサラ、となびかせるアジア系のハーフのような顔立ちの女性。

緑色の細身のワンピースがピッタリと体に合う、スレンダーな美人だ。



美人、だけど偉そう。

その言葉遣いににこりともしない顔、偉そうな態度からなんとなく彼女の性格が想像出来てしまった。



待つ間ちら、とフロアの中を見渡せば、ずらりと並ぶデスクやパソコンとともに室内にいる人たちは女性はもちろん男性もスーツの人はあまりいない。

オフィスカジュアル色の強い職場なのだろう。男性は柄シャツにセーターや、ジャケット、女性はワンピースやニットなど全体的にカジュアルな格好だ。



営業部の人でも結構ラフな格好なんだ。そう思いながら見渡すと、室内の人全員が興味深そうにこちらを見ていることに気付く。

……うぅ、さすがにこうもよく見られると視線が痛い。

つい先ほど堂々と名乗った葛西さんも、その視線たちにまた怖気付いているのだろう。その額にはうっすらと汗がにじむのが見えた。



「ちょっと武田さん席外してるみたい。先にアクセサリー事業部のフロアに案内してあげるわ」

「はい、お願いします」



ワンピースの美女は長い髪を翻し戻ってくると、やはりツンとした態度で私と葛西さんを連れてカツカツと廊下を歩く。



にこりともしない、愛想もない。そもそも挨拶も自己紹介もない。けど営業部にいたってことは、この人も営業職なんだよね。

……まぁ、大きい会社ならその分いろんな人がいるか。

呆れを顔に出さず、長い脚の彼女の大きな歩幅についていくように、私と葛西さんは足早に歩いた。



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