シルビア
……悔しい、なぁ。
望の優しさとか、気遣いとか、そういうあの頃と変わらないところがいちいち嬉しくて。喜びたくないのに喜んでしまうから、また悔しい。
でも武田さんも他の人もいい人みたいだし、柳下さんたちとのことさえどうにかなれば上手くいきそう。
そう思うと先程まで重かった心にもちょっと希望が湧いてきて、頑張ろうとまた気合いが入る。
まぁ部署は別々だし、普段関わりさえ持たなければ大きな衝突も怒らないだろうし……それ以外のところは私がカバーしていこう。
よし、頑張る。
「あっ、すみませ~ん、遅刻しましたぁ」
そう気合いを入れていると、背後からパタパタとヒールの音を立てて走ってくる一人の女の子。
ふわふわに巻いた茶色い髪を揺らす小柄な彼女は、頬にピンク色のチークをのせ、ぱっちりとした二重で私を見た。
わ、可愛い顔だなぁ。
雑誌の中のモデルのような、愛らしい顔立ちと甘い雰囲気を漂わせた彼女に、同性ながらも一瞬どきりとしてしまう。
「えっと……あなたは?」
「あ、織田麻美です。元々は商品開発部だったんですけど、今日付けでアクセサリー事業部に異動になったんです〜」
「織田さん……あぁ、そういえば」
確か葛西さんが、『アクセサリー事業部の商品担当になりたいっていう子がいたので、せっかくだし異動してきてもらうことにしました』って言っていた気がする。
すっかり忘れていたその話を思い出しながら納得すると、彼女・織田さんはグロスの光る唇を動かす。
「それで事務手続きとかしてたら遅れちゃってぇ、すみませーん」
「まだ始業前だから大丈夫だよ。じゃあ向こうのフロアで皆と挨拶しようか。あ、私は三好です、よろしくね」
「はぁーい、よろしくお願いします〜」
舌足らずというか、子供のような甘えた喋り方が少し気になるものの……こうも可愛いと絵になる。
紙袋を手に歩き出す私の隣で、織田さんも一緒に歩き出した。