ユウウコララマハイル
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流し台が比較的狭い。
まずはゴム栓で蓋をして油汚れが酷い皿を入れ、調節しながら水を出し、少量の洗剤を投入する。
溜めている間にコップなどの比較的汚れが少ないものを洗って、バッドに並べておく。
それが終わると沈めておいた皿を一気に洗い出す。
水を抜き、今度はすすぎ洗いをしてから、コップも一緒に食器乾燥機に並べるのだ。


ランチタイムが終わると接客もひと段落する。
ホールをマスターに任せて、カケルは厨房に行って皿洗いだ。
ファミレスやラーメン屋のように回転率がいい店ではないから、それで間にあう。
その上カフェランチはワンプレート料理がほとんどだから、皿の扱いに比較的困ることはない。
困るとすればマスターのこだわりで集めたカップとソーサーで、ひとつひとつ形状が違い、中には取り扱いに充分注意して洗わなくてはならない複雑なものもある。
しかもランチタイム時以外に出される料理皿も同じように癖もので、マスターの妹である調理担当の松本と、その友人であり主にデザートを担当する真智のそれぞれの趣味で集められている。
これらは流し台に水を溜めて汚れを浮かせるということができないため、酷いものはペーパーで拭ってから洗うことにしている。


カケルは試行錯誤しながらこの手順に至った。
自分が働く以前のことは知らない。
カケルが洗うようになってから「欠いたカップがほとんどなくなった」「経費削減成功」とマスターは誇らしく言っていたくらいだから、今よりも乱暴に洗っていたのだろう。


プログラマー兼システムエンジニアとして都内で働き、その会社が残業三昧の休日返上という激務を強要するブラック会社でカケルは身体を壊し退職した。
カケルよりも一年早く辞め地元に戻った今の同居人・中村ナツミの紹介で働き出したカフェ「アスズシキダ」。
その勤務体制は当時と比べると、緩すぎるほど緩いし温い。
一応タイムカードはあるものの、カケル以外はほとんど利用していないし、開店時間までに仕込みが終わるようにそれぞれが出勤している。
マスターの自宅はカフェの二階であるから、いつ行っても店を開けられるということもあるのだろう。
以前特注ケーキを頼まれた真智が十一時に退勤したのち、その数分後に出勤したという伝説も残っているらしい。
そしてランチタイムなどの混雑時以外の空いた時間は自分の好きなことに使っていいし、マスターなどはひたすらお客さんと喋っていたりしている。
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