ユウウコララマハイル
タイミングよくドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」と心の底から真っ当な笑みが零れた。
接客業も板についたものだと密かに感動している。
そんなカケルをよそに、なんとか接客モードを崩さんと努力している様が窺い知れた中村の顔が、あからさまに歪んだ。
テーブルに肘を乗せて、ドアから顔を背けている。


「あぁら、ナツミちゃん。今日は仕事お休みなの?」


中村と違い満面の笑みでその隣に座ったのは、数週間前にカケルが洗濯機の応急措置に行った小井土だ。
その小井土の隣には常連の土橋が座った。


「ナツミちゃん、聞いたわよー」


好奇心を全面に押し出した小井土の顔は、出歯亀といった印象を受けかねないものだ。
週刊誌やワイドショーのゴシップネタを自分の中で誇張し喋るような、味方にすれば心強いけれど、そうでない場合は非常にやっかいなタイプとも言える。
カケルが都内で働いていたときも、そういった女性に根も葉もないうわさを立てられ苦労した記憶がある。


もしかしたらこの間は、セーブしていたのかもしれない。
そのときと今とでは随分印象が違う。


「ナツミちゃん、アカネと一緒にお見合いパーティーに参加し―――」


「嫌です」小井土が言い切らないうちに中村が即答した。
中村の接客モードしか知らない土橋は「こんな一面もあったのねぇ」とマスターに驚いた様子で伝えている。


「あれが地ですよ、ナツミちゃんの。こんな風になったのは高校生からですけど」
「では、鶴子さんの前では昔の中村さんに戻ってしまうのですねぇ」
「小井土さんとナツミちゃんの母親は仲がよかったですからね。家も近いし、半分くらいナツミちゃんは小井土さんに育てられていたようなものなんですよ。だからじゃないですかね」


マスターと小井土は和やかな雰囲気で談笑し、小井土と中村は殺伐な雰囲気を漂わせている。
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