ユウウコララマハイル
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ランチタイムが終わった午後二時半。
カウンター席でランチを図々しく食べているのは中村だ。
古沢の指摘に代わって答えたのはマスターで「これは裏メニューだから大丈夫なんだよねー」と語尾を強調するように言った。
もちろん中村も「ねー」部分に声を重ねている。
中村の外面は他者にペースをあわせることが得意で、愛想がすこぶるいい。


裏メニューと言っても、開店時間前に食べたスタッフの、早すぎる昼食の残りだ。
来月旬を迎えるトマトをふんだんに使ったスパゲティ。
もちろん来月のランチメニューに加える試作品だ。
それを満足そうに食べ終えた中村に、マスターがデザートと珈琲を手渡している。


「はい、これ、ナツミちゃん。桃のパウンドケーキ」
「これももうすぐ旬なんですか?」
「そうなんだけど、これは缶詰。季節感だけは取り入れようかなって」
「桃の旬って六月なんですね」
「六月というか、六月から八月ってとこかな。品種によって違うから」


中村は「ありがとうございます」とそれを受け取った。


「外はサクっ、中はもちっとしっとり。バナナとは違った上品な甘さというか、果実の水分が生地に染み入っている感じがする」


「なんだか本を読んだあとの感想みたいだね」とマスターはわけのわからないことを言っている。


「バナナってことはカケル、早速千秋の教えたレシピを実践したのか」
「古沢はすぐ憧れますから。ある種の才能です」
「ああそうか、作れることに憧れちゃったのね?」


うるさいと睨む。
憧れをエネルギーに変えてなにがわるい。
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