ユウウコララマハイル
カケルは自分自身のことを「人として不足している部分が多い」と思っている。
そのせいで社交性はないし、協調性もない。
ゆえに友人と呼べるのは中村くらいで、親しい人も東京にいた頃はひとりもいなかった。


だからこそなのかもしれない。
自分にないものを持っている人に憧れる。
感情が豊かで表現力を持っている人に憧れるし、人を笑顔にしてしまう人にも憧れてしまう。
自分もそうなりたいと思ってとりあえずやってみるけれど、うまくいったことはひとつくらいしかない。


「古沢さん、わたしの話を聞いていますか?」


正直中村がなにか余計なことをマスターに言うのではないかと気が気ではない。


「すいません、土橋さん」


中村とニ席空けて座っている常連のおばあさん。
七十歳近いというが背筋がしゃんと伸びていて年齢よりも若々しい印象だ。
そして来店のたびに修理品を持ち込んでくるおばあさんでもある。
羽根が取れた扇風機や温風にならないドライヤーの修理、着物の仕立て直し、お宅にお邪魔してテレビを地デジにセッティングしてあげたこともある。
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