ユウウコララマハイル
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売れますように。


ナツミは自分が並べた平台に手をあわせて、神式で祈る。
その平台には毒々しい色たちが並ぶ文庫小説と、それにあわせたPOPたちが共演していた。


普段はバイトにPOPを描かせるのだが、人件費削減で減らされた時間内では日常業務が精一杯で今回はナツミが休憩時間も利用しながら少しずつ作ったものだ。
ナツミはイラストが描けないから文字勝負。
ナツミの字は折り目正しいので正直POP向きではない。
バイトたちが書くくせ字は温かみがあるし、古沢のような悪筆は味がある。
パソコンで制作したほうが簡単なのだが、どうしても無機質というか体温がないので結局手書きにした。
ただナツミのPOPだけではアピールが弱い。
古沢の協力のもと、いらない布地をレースで華やかに彩ったものを文庫の下に敷き、ほかにもストーリーに関連した小道具をパッチワーク風に作ってもらい、少しでも可愛く見えるように飾った。


「そんな難しい顔をして、どうかしたの?」


その声は毎週月曜日、決まった時間に来るマスターだ。
マスターは四十が差し迫った年齢だが、いまだに「努力・友情・勝利」が詰まった少年誌を手放せないでいる。
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