ユウウコララマハイル
古沢が「自分は不幸だ」と泣くまでに辿りついた過程があるのはわかっていたが、配慮せずにナツミは怒鳴る。


「気づけばたくさん、古沢くんの周りにもいいことがあったでしょ。古沢くんだってちゃんと、おばあさんに愛されてたのわかってるんだから。だから恩返ししたいって思ったんでしょ。それって幸せなことだよ」


古沢は自分を育ててくれた祖母への恩返しに間にあわなかったらしい。
苦労させたと、そのことで自分を責め、不幸な自分を育てた祖母が可哀相だと泣く。


「自分の後悔を不幸に変えちゃだめだよ」


酔っ払いの感情の起伏がいまいちわからない。
古沢は反駁を引っ込めて、突然号泣し始めた。
そんな古沢を慰めてあげたいわけではなかったが、きみに似た人を知っていると伝える。
同属主義とは違うのかもしれないが、同じ属性にある人の中に混ざることで、自分だけではないという安心感が芽生えると思うから。


「中学の同級生にいたよ。歳も古沢くんと同じ。瞳の色は蒼玉――サファイアみたいだったけど。もうひとりはね近所にあるカフェのマスター。うわさではそのおばあさんも同じ外見をしているんだって。もしかしたらうちの地元限定かもしれないけど、珍しくないんだよ、そんな外見」


古沢は会ってみたいと言った、酔っ払った戯言かもしれないが。
でも自分はそんな戯言を忘れない。
いつか古沢を連れて行ってあげようと思った。



< 83 / 137 >

この作品をシェア

pagetop