ユウウコララマハイル
中村の中で天使という非現実なものが、日常的であった。
カケルにとってそれは煩わしいことで、言われるたびに反発心を覚えた。
けれど中村は呪文のように「天使」という言葉を繰り返した。
カケルの外見に対しての嫌味ではなく、憧れとして。
そうしてカケルはいつしか話を聞き流せるようになり、気にならなくなった。
それが意図的に行われたのだとしたら恐ろしい。


「俺が実際天使だとすると、アイツもう神の領域なんじゃねえの」


天使よりよっぽど人類は頭が上がらない。
少なくとも中村はカケルの頭上に君臨し続けるに違いない。
苦笑を零すが、カケルの口角は上向きだ。


「よし、決まった」


浮かんだ言葉は感謝の先にある言葉だ。
緑色のペンが言葉を綴っていく。


『セカコイノウミウンナン』


意味は―――――





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