気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
 どんなひどい感想が飛び出してくるのかと、凜香はヒヤヒヤしながら透也の形のいい唇を見つめていると、しばらく味わっていた透也が何度かうなずいた。

「醤油の味が効いていてビールが進みそう」

 思わぬ言葉に凜香は眉を寄せる。

「それってまずいって意味?」
「ビールに合いそうな唐揚げがまずいと思う?」
「えー……」
「食べてみろよ」

 あっと思ったときには、透也に唐揚げを一つ口に押し込まれていた。

(やだ、もう、みんなの前で……)

 恥ずかしくなりながらも、唐揚げを味わってみる。確かに焦げている分、香ばしくて味がしっかり感じられる。

「うん、確かにビールには合いそう」
「だろ? うまいって」

 透也がにっこり笑った。初めて見る、何の下心も感じられない純粋な笑顔に、凜香の心臓がドクンと大きな音を立てた。

「俺、マジで気に入った。全部食うから」
「えっ」

 透也が凜香の後ろから弁当箱を取り上げた。

「だって、そんな……」

 凜香は弁当箱を取り返そうと透也のシャツの袖をつかんだが、透也は反対の手に持ち替えてしまった。

「返してよ」
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