王子様、拾いました。


長谷部くんのことが気になってくると、自然と彼についての話も耳に入るようになる。

大学に通い始めて3年。

朱音の言うようにまったく長谷部くんについて知らなかった私が、かなり詳しくなった。

昔から宇宙に興味を持っていた男の子だったこと。

現在、理学部の教授である柳澤教授とは、長谷部くんが小さな頃からの知り合いで、教授が学生時代の頃からよく一緒に星を見に行ったりしていたこともあって、この大学を選んだこと。

とにかく教授とふたり、いつも研究室や天文台にこもっていること。

そして。

とっても可愛い女の子と一緒にいる所がよく目撃されるらしい、ということ。




その話を聞いた時、妙に冷静に納得できる自分がいた。

あれだけかっこいいんだもん、彼女がいないわけないよね、って。

でも、それをとってもショックに思っている自分も心の中にいて。

今すごく長谷部くんに会いたいのも、このモヤモヤしている自分の心をスッキリさせたい、っていう思いもあったりする。

朱音にはごまかしたけれど。

私は少しだけ。

長谷部くんのことが気になっている……。




朱音と別れてから、私は長谷部くんの学ぶ理学部のある方向へと歩みを進めた。

こうなったら自分が納得するまで頑張るしかない。

そうよ、警察だって『情報は足で稼げ』って刑事ドラマで言われているじゃない。

そう自分に言い聞かせて歩いていると、数メートル先に、ひとりの女の子が困った顔を浮かべているのが見えた。


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