四季物語~甘く切ない四人の高校生~
1 暖かな春の日に
「あんた馬鹿だな」
「私は馬鹿じゃないわ、あなたの方が馬鹿じゃない」
そういう意味ではないと思うも口に出さない。
「そうだったな、まぁともかく俺たちはゆっくり話でも聞くだけだ」
神守は上を向く。
彼女も上を向いた。
「雨雲か」
「まだ遠いけど」
暗い雲が遠くにあった。
風が強く吹く。
「戻りましょ」
彼女がそう言い視線を送ると彼は深く頷いた。


1:暖かな春の日に

春休みが終わり、新学年にあがる1年生と2年生
一人あくびをし、グランドの整備をする少年
「なに珍しいもんみたような顔してんだよ」
少年は少女に言った
「別に…少し意外だっただけよ」
少女は言った
それは皮肉にもとれるが、彼女が口下手ということを知っている彼はそれは褒め言葉だと受け取った。
彼女は仕事があるからと一声かけいなくなってしまった。
「もう三年か、俺ら」
伸びをして太陽を見上げる。
そしてまたグランドの整備をし始めた。


今日からこの学校に通うのか、心配だな。
一人の少女は悩ましい顔だった、彼女は新入生ではない、転入生なのだ。家の都合で引っ越してきた彼女にとっては、なにもかも未知であり、それはとても喜ばしいことであり不安だった。
しかしこの学校の生徒は個性豊かそうだ、チラチラと登校する生徒を見ると、ピアスを開けてる者、iPodで音楽を聴く者、ギターを背負い歩く者など十人十色だ。
ピンクの花びらが舞い少し世界が明るく見えた
もう心に不安はなかった。

日当たりの悪い武道場、どこか疎外感を感じる。そこには音など無であるが、音というより気配はある。それは竹刀を振るう気配だった。
汗はかかずとも、神経を尖らせて行うそれは並の集中力では長時間やることは不可能だった。
しかしこの男はやっている。そして竹刀を降ろし時計を見た。
「もう行かないとな」
と独り言のように呟かれていた。
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