君の隣
二度めの失落





私は、沖田さんと別れると、急いで、萩に戻った。




禁門の変に敗戦したとたんに、エゲレス、メリケン、フランス、オランダが、長州に向かったと、知らせが来たからだ。




なつ「戦争になる・・・。」




すると、秘密留学していた伊藤さん、井上さんらも帰ってきていた。




なつ「伊藤さんっ!」



伊藤「おなつちゃん!」




なつ「お帰りなさい!4カ国が!」



伊藤「僕達は、外国を見てきた!戦争になったら、確実に負ける・・・。」




なつ「でも、前に、外国艦隊を攻撃したのは、幕府が攘夷をすると言ったから、それを長州藩は実行しただけのこと。」




伊藤「そうだけど、ヨーロッパは、長州の暴挙だと言ってる。」




なつ「そんな・・・。」



井上「いっそのこと、ヤられて、ヨーロッパには適わないということを自覚した方がいいんじゃないのか?」



なつ「そんな・・・。」










心配は、ついに、実際に起こることとなった。






8月5日。



国東半島の姫島沖で4カ国は実行砲撃を開始した。





始まった・・・。





こちらは、下関の海岸線に14台の青銅砲を配置したが、足りず、木製の桶の要領で作られた大砲も使われた。



木製の大砲は、2、3発撃つと、壊れる。



大工が、駆り出されて、作った物だった。








私は、奇兵隊総督になった、赤祢さんの所へ行った。




なつ「赤祢さんっ!ただいま戻りました!」



赤祢「おぉ!おなつ!ご苦労様!」




なつ「どういった状況ですか?」



赤祢「ダメだ。前田は集中的に攻撃されて、使い物にならない。」




なつ「わかりました!状況を見てきます!」



赤祢「頼む!」




私は、馬を走らせた。





壇ノ浦に行った。




なつ「山県さんっ!」




ドーーーン。



ドーーーン。


と、凄まじい地響きがしている。




そして・・・。




ドーーーン。




砲撃を直接受けた兵が粉々になり、辺り一面、血の海だ。





そんな・・・。



高杉なら・・・。



高杉ならなんとかしてくれる・・・。












私は、藩主様にお目通りに行く。




なつ「殿!壇ノ浦にも四艦隊が上陸し、占拠されました。高杉を!政権に戻して下さいっ!お願い申し上げます!」



殿も、状況を把握したようだった。




敬親「おなつ。高杉の所へ迎えに行ってこい。」




なつ「ありがとうございます!」









私は、高杉の実家へ行く。





部屋に通されて少し待っていると、身ごもったおなごがお茶を持ってきた。




高杉の奥方・・・。




なんと、綺麗なお方・・・。




なつ「ありがとうございます。」




奥方は深々と頭を下げて、部屋を出て行った。




すると・・・。





小忠太様と高杉が、部屋に入ってきた。





高杉は、少しやつれていた。




なつ「晋作殿、大丈夫ですか?」




身分的には、今は、私が上なのだ。




高杉「はい。大丈夫です。」




なつ「高杉 晋作殿、殿からの命に御座います。」





高杉からすると、切腹や流罪といった事かもしれないからだ。




なつ「申し上げます。高杉 晋作殿。御手当方御用掛のお役でございます。すぐに、世父様の所にお連れするよう言い渡されております。御用意頂けますか?」




高杉は、固まっている。




小忠太様も固まっている。




なつ「御用意を頂けますか?殿がお待ちです。」



高杉「は・・・。はいっ!」



そして、部屋から出ていき、小忠太様と二人きりになる。




なつ「良かったですね。向こうで、御手廻組に加え政務座役を命じられるかと思います。」



小忠太「真ですか?」


なつ「えぇ。」



小忠太「ふっ・・・。ズズッ。」



涙ぐんでいる。



獄中の罪人が重臣に復活したのだ。





それは、それは、嬉しい事だろう。



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