都合のわるい女
いきなりそんなことを言われて、俺は電話ごしに「はっ?」と目を剥いた。


でも、タカハシは聞いていない。



『5分以内に来て』


「無理だよっ、いま一号館なんだよ!」


『ダッシュで走れば間に合うでしょ』


「な……っ」


『じゃ、急いでね』



ぷち、っと電話が切れた。


俺はため息を吐き、立ち上がる。


吉岡が目を上げて、「どした?」と訊ねてきた。


俺は「タカハシに呼ばれた」と答え、リュックを背負う。



「また呼び出し?」


「うん、まぁ」


「ってか、今からカワタたちとカラオケ行くから、お前のことも誘うつもりだったんだけど」


「んー、ごめん、今日はパス……また今度さそって!」



俺は吉岡に手を合わせ、そのまま手を振り、一号館を飛び出した。




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