都合のわるい女
「ニッシー! ここ、ここ!」



正門の柱の前でぶんぶんと手を振るタカハシを見つけ、俺はぜえぜえ肩で息をしながら駆け寄った。



「……なんか、あったのか?」


「おっそい! 1分遅刻!」



不測の緊急事態でも起こったのかと心配する俺をよそに、タカハシは不満げに眉をひそめて、俺の遅刻を批難してきた。



「1分くらいいいだろ!?
俺、キャンパスの端から端まで走って来たんだぞ!?」


「5分以内って言ったじゃん!」


「無理って言っただろ!」



ぎゃあぎゃあと言い合っていたら、周りの学生たちが白い目で俺たちを見ながら通り過ぎていった。



「………とにかく、話を進めよう。
何かあったのか?」



俺が声のトーンを落として訊ねると、タカハシは高飛車な態度で、



「バイトに遅刻しそうだから、バイクで送って!」



と言ってきた。




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