恋する淑女は、会議室で夢を見る



「おはようございます!」

「おはようございます」

真優の元気いっぱいの挨拶に、瀬波は軽い挨拶で答えた。


「桐谷専務は、社長と一緒に午後から出勤します」

「はい わかりました」

そのまま瀬波は専務室に入ろうとしたが、ふいに何かを思い出したように立ち止まった。

「つかぬことを伺いますが…
 専務となにかありましたか?」

「え!
 もしかして専務、呆れてました?」


「…いえそういうわけでは…
 なにがあったのです?」

真優は土曜の夜の出来事を説明した。
と言っても瀬波にマー先輩のことまで話す必要はないと思ったので、
話の内容は、たまたまホテルのロビーで会い合流したのだが
真優が酔ってしまって、途中からの記憶がないまま専務に家まで送ってもらったという話だ。

「もしかすると、専務に失礼なことを言ったのかもしれません…
 専務にあやまらなくちゃ」



シュンとする真優を軽く励まして専務室に入った瀬波は、
実際に見えるわけではないが、壁越しに真優を振り返った。


――酔った青木真優となにかがあったのか?…


昨日、社長たちと執務室で仕事の話を詰めた後、遥人の部屋に行って話がひと段落した時である。

何気ない様子で遥人が
『秘書 代えてもらおうかな』
と言った。

専務と秘書として2人の関係は良好だと思っていた。
いままで遥人の口から青木真優に対する不満が出たことはないし、青木真優のほうからもそんな様子が見受けられたことはない。

考えられるのは仕事のミスだが、
『…青木真優がなにかしましたか?』
そう聞いてみると

遥人は少し考えて、質問には答えず
『当分はバタバタ忙しくてそれどころじゃないし…
 まぁ今はそこまで”うっとおしい”わけでもないからすぐにじゃなくていい
 でも、頭に入れておいて』
と言った。
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