恋する淑女は、会議室で夢を見る

つらつらそんなことを思いつつ
気を取り直した遥人は、ニッコリと真優に微笑んだ。


「ねぇ真優」


名前で呼ばれた真優は、

ハッとしたように顔をあげた。

血色のいい頬がみるみる赤く染まってゆく。


”青木くん”とか”青木真優くん”とか呼ばれていたのに
婚約してからというもの、2人でいる時になると
真優は遥人に、”真優”と、呼ばれるようになった。

その響きがこそばゆく耳をくすぐり、
呼ばれる度に真優はつい、デレデレに照れてしまうのだ。


首筋まで赤くなった真優を、面白そうにクスッと笑った遥人は

「夜は長いから、ゆっくりお食べ」

そう言いながら、自分の葛切りも真優の膳に置いた。
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