恋する淑女は、会議室で夢を見る
 
桐谷遥人は、圧倒する存在感を放ちながら
開始時間ピッタリに会議室に入ってきた。


―― 年齢はいくつくらいだろう?

予想していたより若く、真優には自分の少し上くらいに見えた。

なのに、
父親くらい年の離れた小林部長は、緊張がちに腰を低くして桐谷遥人を迎えたのである。


その様子から、
真優は先が思いやれる憂鬱な気持ちになった。



なにしろ 御曹司だ。


苦労知らずなくせに、
横柄で、横暴で、とんだ我儘野郎かもしれない。


そう思いながら、心でため息をついていると、

『どうぞよろしく』
と、桐谷遥人は柔らかい笑みを浮かべて微笑んだ。


その微笑は
 ふわっと花が咲いたように穏やかで
   優しげで…


真優は予想とは、違っていた。





会議が始まると、
桐谷遥人はメモを取りながら、全員の挨拶に耳を傾けていた。

時折質問をして、頷いてみせるその真摯な姿を見ているうちに、
真優の心には、尊敬する心が沸々と湧いてきた。



奢るわけでも
人を見下すような様子もなく 

桐谷遥人は、魅力ある見た目も、態度も、何もかも完ぺきな
KIRITANI王国を継ぐ次世代王子として相応しい御曹司だったのである。
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