恋する淑女は、会議室で夢を見る
 

「例の会議があったの…」

「あ、例の御曹司出席のですね?」

「うん…」



午後、プロジェクトチームの顔合わせがあった。


会議室には、様々な部署から十数人が集まっていて
 そのほとんどが、真優の同期の社員だった。


「会議自体は、何の問題もなかったの
 プロジェクトの概要と自己紹介程度の話だったし」

ふむふむと、ユキが頷く。


「問題はその後でね…」


真優は頭を抱えて
 ハァーー と大きなため息をついた。




帰りがけに
『きみ・・えっと 青木さん』
と、桐谷遥人に呼び止められたのだ。


『はい』と、一人その場に残って言われた言葉は


『髪が 跳ねている
 それに、君はどうして化粧をしないのですか?』 




眉ひとつ動かさず
 まっすぐに真優を見て、彼はそう言った。



『え・・・』

突然のことに戸惑って固まる真優に、


『身だしなみは気をつけるように』


話はそれだけだと言って、
 桐谷遥人は席を立ったのである。
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