笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~
『陽泉さんって…?
あぁ、あのホテルで会った綺麗な人? 祐介先輩が"彼女"って言ってたよね?』
『…確かに綺麗かも知れないけど。あの時、祐介先輩には美咲さんがいるってハッキリ言ったのに、まだ祐介先輩と別れてないなんて…。
祐介先輩、あの人のキープなのかな?』
『くるみちゃん。何よ、そのキープって?』
『男をキープしておくってことですよ。
あの時だって、2人のカッコイイ男性と一緒だったじゃないですか?
自分は"綺麗"だと思っているから、外見がそれなりな男性を、たくさんキープしてるんですよ。
で、祐介先輩もその1人だから、なかなか別れてもらえない』
『うわぁー、何それ!
最悪な女じゃない?』
『そうですよね。
で、そんな女に限って、中身はスカスカなんですよね』
『陽泉さん、バスケットが上手くて、小中高と全国大会まで行ったんだって。県内では、かなり有名な選手みたいよ』
『へぇ。
バスケが上手くて、ちょっと綺麗な、中身がスカスカな人なんですね』
『………………』
『……………』
『…………』

私は耳を塞いだ。
それ以上の話は聞けなかった。

"どうして、良く知りもしない人たちに、こんなふうに悪口を言われなくちゃいけないんだろう?"

「陽泉、ひなみ!」
と呼ぶ紗英ちゃんの声が遠く聞こえた。

そして私は、いつの間にか意識を手放した。



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