笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~

  揺れる想い~紗英Side~





『私は彼を、絶対に好きにならない!』
その自信があったはずなのに…

気付けばオフィスで、
または飲み会の場で、
彼の姿を目で追っている私がいる。
だから、すぐに分かった。
彼の視線の先に、誰がいるのか―



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

ある火曜日。
いつものように仕事をしていると、2つ隣のディスクの島から、
「ねぇ陽泉ちゃん。今夜ヒマ?」
と言う声が聞こえた。
声の主は、3年先輩の山崎さん。
山崎さんは陽泉がお気に入りらしく、最近はこうして誘う姿を良く見かける。
一方の陽泉は、困った顔をしている。
私がそばにいたら、助けてあげられるのに。
そう思っていたら、
「山崎さん。陽泉は今日、俺と約束があるからダメです。
今日だけじゃなく、ずっとダメですよ!」
そう言って陽泉に助けたのは佐々木くん。
陽泉は佐々木くんを見上げて微笑んだ。
その姿を見た山崎さんは、チッと舌打ちをしてオフィスを出た。

「山崎も、いい加減に陽泉ちゃんのことを諦めればいいのにね!
佐々木が相手じゃ、勝てるわけないんだから」
そう言うのは、私の隣の田島芳江(タジマ ヨシエ)さん。
「でもさ紗英ちゃん。
あんなに佐々木に愛されてるのに、陽泉ちゃん本人は、本当に気付いてないの?」
「はい、そうみたい…です」
私と田島さんは、同時にため息をついた。
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