笑顔の行方~バスケットが繋いだ恋~

  再会の瞬間(トキ)





「やっぱり陽泉だ。久しぶりだな」
私との距離を縮め、懐かしそうに話しかけてくる彼。
「うん、久しぶりだね」
私も返事をする。そして、彼のつけているネームプレートを見る。

『静岡県富士中学校コーチ   佐々木稜』
と書いてある。

そのチームは、知っている。
昨年の優勝チームで、今年の第1シード。もちろん優勝候補で、拓海たちが頂点に立つために乗り越えなければならない1番大きな山だ。

彼も私のネームプレートを確認したみたいで、
「陽泉や拓海と対戦するのは決勝戦だな。
それまでは負けられないな!」
そう言ってくる。
「そうだね!今年こそ優勝するから、決勝戦でも負けないから!」
私も言い返すと、
「うん、楽しみにしてるよ」
と、微笑まれた。

「……………」
「……………」
しばらくお互い無言。
そして、
「…信じていたよ。
この大会で、また陽泉に会えることを…」
彼がそう言うと同時に、
「稜くーん」
と彼を呼ぶ女性の声と、
「おーい、ヒナ」
と私を呼ぶ祐介の声が聞こえて、お互いに振り返る。

祐介は私の隣に並ぶと、
「あれっ?佐々木さん?
えっ…?富士中のコーチ…?」
と、佐々木くんの存在に気付く。
佐々木くんも祐介のプレートに気付き、
「…ご無沙汰してます。
吉田さんもバスケを…?」と聞いてくる。


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