残業しないで帰りたい!

驚いて彼女を少し離してじっと見つめた。

「でも、今まで散々合コンなんて行って、恋人探ししてなかった?」

「合コンは行ってたけど、恋人探しなんてしてないもんっ」

「?」

「みんなでワイワイするのは好きだからさ。それに……少しはヤキモチ妬いてくれないかなーなんて思ったりして。峰岸君、私に全然興味ないみたいだから、少しでも興味持ってほしいなって、そんなこと思ってた……。バカだよね」

そんなこと……。

君はそんなことを思ってたの?

俺はあんなに君のことばかりを見ていたのに。君のことしか見ていなかったのに。やきもちばかり妬いていたのに。

俺たちはお互いの何を見ていたんだろう。

「峰岸君に振り向いてもらえなくてずっと苦しかった。でも、すごく積極的な人が現れて、私すごく迷ってた。振り向いてくれない人より、私を好きになってくれる人の方がいいのかなって……」

「俺はずっと振り向いてたよ!3年前からずっと白石さんのことばっかり見てた」

「うっそだー!」

「ホント。でも白石さんは俺のことなんか眼中にないんだろうなって思ってた」

「……そうなの?」

「そうだよ」

「じゃあ……、お互い様?」

「うん、お互い様。俺はずっと前から白石さんのこと、好きだったよ」

「……」

ハッキリ「好き」と言ったら、彼女の瞳が揺れた。

そんな彼女が愛おしくて、もう一度その揺れる瞳を見たくて、彼女の瞳をじっと見つめてもう一度言った。

「君のことが好きだ」

彼女はうつむいて、コツンと額を俺の胸に当てた。

「……私も、好き」

その台詞と小さく身じろいだ彼女の動きに耐えられず、もう一度強く抱き締めた。

その台詞は、本当は顔を見て言ってほしかったけど、それはそのうちね。

俺たちの時間はこれからだから。
まだ時間はたくさんある。

俺でもあんなイケメンに勝てるんだな。

もういい加減、自分を卑下するのはやめよう。

そんなんだから、俺は君をちゃんとまっすぐに見ることができなかったんだ。
自分をまっすぐ見ることもできないない俺が、君をまっすぐ見ることなんて、できるわけがなかったんだ。

だから、君の気持ちに気が付くこともできなかった。
現実から目をそらしたくて、友達ならそばにいられるなんて考えて、俺はいつも逃げてばかりいた。

でも、君のおかげで自信が持てたよ。
もう逃げたりしない。

これからは自分とも君とも正面から向き合おう。

だいぶ待たせちゃったけど、もう君のこと、絶対に離さないよ。




【 遅くなってごめん 峰岸大樹 】
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