さくら


ふいに志信が桜子の二の腕を掴んだ。

「志信さん・・・・・?」

「出ていくのは嫁に行くときだけやぞ?それ以外は絶対にこの家から出さへんからな」

真剣な瞳で志信が桜子を見据える。

「え・・・・・?でもさすがにお嫁さんが来たら出ていくよ?邪魔になるし」

「邪魔やない!大体お前が邪魔やなんていう女なんかと結婚せえへん」

掴まれた腕には痛いくらいの力が込められている。自分はどこまでいってもこの人の『妹』なのだ。絶望が桜子の心を支配する。

志信の幸せを間近で見て、果たしてわたしは冷静でいられるのだろうか・・・・・?

これまでも、これからも『妹』という甘い枷は、叶わない想いを抱いた桜子をずっと苦しめるのに、優しい志信の腕の中を飛び立つ勇気もない。
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