東京血風録2-緋の試練

そして長野










 長野駅で柊一と真琴と合流した。

 柊一によると、ここからローカル線に乗り換えて5駅、そこからバスに揺られ最寄りの停留所から1時間以上歩くとのことだった。

 4人は意を決して歩み出した。









 長野県○○村には、夕方4時過ぎに着いた。
 日が落ちる前に着いてよかったと安堵するのと、その遠さに辟易するのと複雑だった。

 停留所から、山間に抜ける小径を歩き始めて小一時間、村への入口を過ぎた頃、一枚の立て札と共に三叉路に突き当たった。
 
 古ぼけた立て札には右に○○村、左に
○○村東部と書かれていた。

 立て札の前で、ここは右かい?と尋ねる飛鳥に対して、柊一が妙なことを言い出した。

「飛鳥、立て札の後ろを見てみてくれ。何かあるかい?」
と。
 
 柊一は、グレーのジャケットをわりとフォーマルに羽織りながらも、ここまで汗もかかずに登ってきていた。

 相も変わらずの制服姿の飛鳥が、立て札の後ろを覗き込み、
「雑草が生い茂っているだけで、何もありゃせん」と返した。

 右手の人差し指と中指を伸ばした状態で顔の前へ置き、何か小さく呟いたかと思うと、小さな笑みを浮かべ、
「もう一度見てくれたまえ」と、飛鳥に促した。

 立て札の後ろを再度見た飛鳥が叫んだ。
「道が!道が出来ている!」



 それは、生い茂った雑草が左右に分かれて出来た、細い小径であった。

「隠し通路です」
柊一が呟いた。

 
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