リナリアの王女
 『エリーゼ様は、不思議な方ですね。侍女の私友達になってくれなど・・・』




暫くの沈黙の後彼女はそう言った。
「ごめんなさい。年も近そうだったから友達になってもらいたくて。無理・・・ですよね?」
『他の方がいる時は無理ですが、エリーゼ様と二人の時だけでしたら・・・』
「本当ですか!?」
思わぬ返答に嬉しくて大きな声が出てしまった。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
『友達でしたら尚の事敬語は不要ですよ。それと、呼び方もエリーゼ様のお好きなように呼んでいただいて大丈夫です』
少し困ったような感情が混じっているが、彼女がそこで初めて笑顔を見せてくれた。
「ありがとう!じゃあサラちゃんって呼ぶね!!サラちゃんも私の事を様付けで呼ぶのはやめてくれないかな?」
慣れてなくて、と続けると、

『では二人の時のみエリーゼさんとお呼びすれば良いでしょうか?』
「それでいい!!本当にありがとうね、サラちゃん!!」

ここに来て私は初めて自然に笑顔になれた気がした。
正直、異世界の知らない場所で、知らない人達に囲まれてこれから生きていかなくてはならない事に不安しかなかったのだが、思わぬところで友達が出来た。


まぁ・・・半ば無理矢理ではあるが・・・。


『ふふ・・・本当にエリーゼさんは不思議な方ですね。こんな方初めてお会いしました』
敬語は彼女の立場上なかなか崩せないのだろう。
「ごめんね。私、慣れてなくて・・・。様付けされるような立場になった事なんてないし」
『そうなのですか。私も少しずつ慣れていきますね?』
さっきの苦笑交じりの笑顔の時も思ったが、やっぱり彼女の笑顔は可愛い。

「サラちゃんの笑顔は可愛いね!」

思った事を口にしたら彼女の顔が赤くなった。
『い、いえ・・・そんな事・・・エリーゼさんのようなお綺麗な方に言われてしまうと照れてしまいます』
顔から火が出てしまいそうなぐらい真っ赤で吃りながら言われてしまった。
「私が綺麗・・・?」
そんな事初めて言われた。
『エリーゼさんはとってもお綺麗ですよ。その漆黒の髪も瞳もこちらでは珍しいですから』
「そうなの?やっぱりこちらの世界では皆サラちゃんやクラウドのような容姿なの?」
『そうですね。大体の方は私達のような容姿ですね。もっともクラウド様のような金髪に蒼い瞳は王家の方のみですが』
「あの綺麗な瞳は血筋なのね・・・」




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