リナリアの王女
 とりあえず待っていても夢から覚める気配がしない為、状況の確認をする事にした。
「ここはどこなの?」
近くにあったソファに向かい合って座り、私はクラウドという男性に尋ねた。
「ここはリナリア。俺が統治している国だ」
「あなたが統治している国ってことは、国王様?」
信じられない。
この若い男性が国王だなんて。
それに聞いた事のない国名だ。
やっぱり夢の中なのだろうか。
「実際には次期国王なのだが、実質上はそういう事になるな。だが畏まらなくて良い。なんて言ったってエリーゼは俺の婚約者、ゆくゆくは妃になる存在なのだからな」
「婚約者!?」
私はいつの間に知らない男性の婚約者になってしまったのだろうか。
「私はあなたの事何も知らないのよ!?それなのに婚約者だなんて・・・」
訳が分からない事態が続いている。本当にこんな夢ならば早く覚めてほしい。
何度目かの同じ事を半ば祈りのように心の中で呟いた。
「それはこれから知っていけば良い。だから暫くは婚約者という形をとり、時が来たら結婚をすれば良いのだ」
ここまで来るのに十分に待った。もう少し待つぐらい何でもない、と男性は続けた。
「ここまで来るのに十分待ったって・・・?」
「ここリナリアの国王となる者はその妃を探す事で、その地位を本当のものとするのだ」





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