リナリアの王女
 元の世界の思い出とか全てがなくなってしまっても、これからの人生、クラウドと生きていくというのも良いかもしれない。

こっちの世界にも友達だって出来た。心強い味方だって出来た。使用人さん達とだって少しずつ仲良くなれてきた。

失ったものばかりじゃない。

ここに来て得たものも沢山ある。

クラウドの婚約者という立場の重みをまだ十分に理解しきれていないだろうけど、それだって教えてもらいながら、乗り越えていこうと思える。
私の言葉を聞いてクラウドは驚いていたが、すぐに真剣な顔になった。



「ああ、俺がエリーゼの笑顔を守る。エリーゼを悲しませることから遠ざける。寂しい思いもさせない。他の誰でもない、俺自身が、エリーゼを幸せにする」



「私、泣き虫だから、寂しくなって泣いちゃうかもよ?」
「その時は俺が泣き止むまで一緒にいる」
「国王の奥さんになれる程の教養だってないから、クラウドが恥ずかしい思いをするかもしれないよ?」
「エリーゼはエリーゼのままで良いんだ。俺は恥ずかしい思いなんてしないし、周りに何か言われたって気にする必要はない」

張りつめていた空気が和み、何てことない言葉の応酬を続ける。

「クラウドは、本当に私で良いのね?後悔したってもう元の世界に帰れないんだから」
「何度でも言ってやる。俺はエリーゼが良いんだ。エリーゼじゃなきゃ意味がない。ずっと会える事を、言葉を交わせる日を待っていたんだ。エリーゼがもし帰りたいと思っても帰らせてやる事は出来ない」

「じゃあ責任を持って、私の事を幸せにしてね?」

どこまでも素直になれない私。
「ああ、エリーゼこそ、俺から離れる事は出来ないと思え。もし帰る方法が見つかったとしても、もう離してやる事は出来ないぞ」


こんなに真摯に私の事を想ってくれている。


私からも言おう。


一番大切で、クラウドが待っているはずの言葉を。






「クラウド、好きよ。いつの間にか貴方の事が好きになってた」




「嬉しいよ、エリーゼ。俺が誰よりも幸せにすると誓おう。愛してる」



私達は自然にお互いの唇を合わせた。





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