ケータイうさぎと意地悪先輩。FINAL

「窓、開けてもいいかな?」

「いいよ」

 私は窓を開けると、涼しい風が入って来た。

 ツーサイドアップの黒髪がふわりと上がる。


 気持ちいい風だなぁ……。


 私は風にあたった後、左から2列目の一番前の椅子に座る。

 優人君はグランドピアノの椅子に座ると、私を見ずに真っ直ぐ前を見据えながら、

「うさ、僕、今から練習するから」

 と言った。

「うん」

 私がそう短く答えると、優人君は鍵盤に長くしっかりとした指先をふわりと下ろし、ピアノを弾き始める。

 私はじっと優人君を見つめる。


 優人君、何も見ずに弾いてる……。

 それだけでも、初心者の私からすれば凄いのに、もう自然っていうか、ピアノが体の一部っていうか、ピアノを弾いてる感じがしない。

 愛おしい誰かの頭をよしよしって撫でてるような、そんな感じ。

 先輩が前に、『コンクールで優勝してるし凄いよ』って言ってたけど、本当に凄い……凄いよ。

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