ケータイうさぎと意地悪先輩。FINAL
「優人……君っ……」
私は顔を青ざめ、声を震わせながら廊下で爽やかに笑う男の名前を呼んだ。
「名前、久々に呼んでもらえてすごく嬉しいよ」
開いた扉からフード付きのハーフコートを着た優人君が、病室の中に入ってくる。
ベットを囲んでいるカーテンが、私の横で少し揺れ動く。
「花嫁、長い間、待たせてごめん……。逃亡中、雨瀬先輩が眠っている間に殺すことも考えたんだけど、それじゃ本当の意味で僕が勝ったことにならないから、目覚めて動けるようになるまで待ってたんだ。そしたら、こんなに迎えに来るの遅くなってしまった。本当に、ごめんね……」
首に白のマフラーを巻き、診察衣をまとった雨瀬先輩が口を開く。
「俺が目覚めてから来ると思ってたけど、クリスマスイヴを狙ってやっぱりきたか。俺の思った通りだったな」
優人君は冷たい目で雨瀬先輩を見る。
「優人、今まで何処にいたんだ?」
雨瀬先輩は、私のすぐ後ろにあるベットの上に腰を下ろしたまま尋ねる。
「うさぎパークで倒れ目覚めたら何処かの別荘で、すでに傷を負った左の頬も左瞼も右足も治療がほどこされた状態だった。後々、あの人の別荘だと分かり、ずっとその別荘に住まわせてもらっていた」
「あの人って……、瀬名君のお父さん……?」
私が尋ねると、優人君は、
「僕の花嫁にした後にじっくり話すよ」
と言って、スマホの左側にあるSと書かれたボタンを押す。