イジワル婚約者と花嫁契約
番外編:兄になるための心構え
「ちょっとお兄ちゃん!いい加減にして!」

「無理だ!絶対に!!」

大安吉日の日曜日の朝。
今日ほど迎えたくない一日などない。

開けさせまいと必死にドアの前で身を盾にしていた。

「もー早くしないと間に合わなくなっちゃうでしょ!」

部屋の中からは灯里の切羽詰まった声が聞こえてくる。

「そのために俺はここに立っているんだ!」

そうさ、灯里を生かせないためにこうやっている。
だって今日は灯里の結婚式なのだから――……。


誰が想像できただろうか。
両親によって俺がいない間に勝手に灯里が見合いさせられ、そいつと結婚することになるなんて。
今や晩婚の時代だというのに、そんな生き急いで嫁に行くことないじゃないか!

「俺だけの灯里だったのに……」

ドアを必死に塞ぎながら漏れてしまった言葉。

そうさ、出会った時からずっと灯里は俺だけのものだったんだ。
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