イジワル婚約者と花嫁契約
もはや兄が言うような言葉じゃない。
まるで恋人に言うような言葉だ。

「頭が痛いわ……」

お母さんも同じことを思っていたのか、お兄ちゃんの行く末を心配してか頭を抱えてしまった。

「なんだ母さん、大丈夫か?あとは俺達で大丈夫だから横になっていていいぞ。灯里!さっさと食べていくぞ!」

「うっ、うん……」

お母さんの頭痛の原因は明らかにお兄ちゃんなんだけどな。
そんなことは言えない。そしてこの雰囲気……どうやら一緒に行くことは断れなさそうだ。
それにここで断ってお兄ちゃんが不機嫌になって、会社の人に火の粉が飛んだら申し訳ないし。……なによりも、お兄ちゃんに私も聞きたいことがある。

「いただきます」

今日だけは一緒に通勤しよう。
そう決め、お母さんがソファーで休んでいる中、お兄ちゃんと共に朝食を食べた。



「ご機嫌ですね、代表」

「当たり前だろ?灯里が隣にいるんだから」

時間通りに迎えにきてくれた秘書の田中さん。年齢はお兄ちゃんと同じくらいだけど、社内で誰よりも仕事ができる人だ。

「すみません、私まで……」

ミラー越しに田中さんと目が合ってしまい、思わず怯みそうになる。
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