寂しがりヒーロー
「じゃーな、伊月、カモ!」

「お幸せに!」

「風邪引かないでくださいね!」


口々にそういうみんなに手を振り、僕はカモちゃんと並んで歩いて帰った。


「...カモちゃん」

「え、あ、何?」


さっきからカモちゃんはいつもと違って、僕と目を合わせない。
僕から背けている顔が耳まで真っ赤なのを見て、笑みがこぼれる。


「ねぇ、カモちゃんってば。こっち向いてよ」


カモちゃんは少しピクッと反応して、僕の方に振り返り、僕はカモちゃんの唇に、自分の唇を重ねた。


「んっ!?」


驚くカモちゃんからゆっくりと唇を離す。


「...さっきの、続き」


僕がそう言うと、カモちゃんの顔はもっともっと赤くなる。


「えへへ、カモちゃん可愛い」

「なっ!?もう...」


甘い甘いカモちゃんの優しさに、ちょっぴり苦い僕の傷跡が溶ける。

僕は、やっと独りじゃないと気づいた。
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